型採り(印象採得)は簡単ではないんです。
他項で述べたプロビジョナルレストレーション(目的を持った仮歯)と同様に、ちゃんとやろうとすると”きりが無い”ぐらい奥が深いのが印象採得です。
印象採得を成功させるには、前準備として歯肉を引き締める事が非常に大事です。
ではどのようにして歯肉を引き締めていくかと、歯肉圧排については写真と図を用いて簡単に説明いたします。
①まずは虫歯を削りとります。
②虫歯があれば殆どその辺りには歯肉炎があるので虫歯を削ると歯肉から出血してしまいます。
少しでも出血すればその日は綺麗な型採りはできません。
③したがって、この日は仮歯を製作します。可能な限り削ったラインにフィットした仮歯を作ります。
(次回までしっかりとブラッシングをするように指示いたします。)
④次回には歯肉は必ず最初より良くなっているはずです。
歯肉が引き締まっていれば⑤に進みます。
歯肉がまだ引き締まってなければ、再度形成ラインをスムーズに仕上げ削りをして、そのラインに仮歯を合わせなおします。
そして次のアポイントを待ち、歯肉が引き締まってきていれば
⑤に進みます。
⑤もし歯肉が良くなっていれば歯肉の溝に細い糸を挿入する。
⑥糸を入れた後に仕上げ削りをします。前回までに仕上げ削りが完了していれば削らずに⑦に進みます。
⑦⑤で入れた細い糸の上に少しだけ太めの糸を挿入します。
⑧型採りの際に血が滲まない様に止血を確実にする薬液を塗布して5分程度待ちます。
⑨2本入れた糸の、後で入れた太めの糸のみ外します。太めの糸が入っていた分、歯から歯肉が開いているのでそこに精密な型採り材料を流し込みます。
このような過程を経ることにより、
最初に虫歯を削ったアポイント時に型採りをするよりも遥かに綺麗な型取りができます。
歯型が綺麗に採れれば詰め物と歯の合わせ目のフィットが良くなります。そうすると虫歯も出来づらいし、歯肉も健康に保ちやすくなります。
上記の作業は口で言うのは簡単ですが、実践するには特に根気が必要なんです。
なので実際には行われていないことが殆どだと思います。
でも凄く大事です。
【STEP.1】
最初に細めの圧排糸(1次圧排糸)を歯肉溝内に挿入する。
【STEP.2】
引き続いて、若干太めの圧排糸(2次圧排糸)を挿入しておく。
【STEP.3】
印象直前に2次圧排糸のみを撤去する。そして1次圧排糸が歯肉溝底に挿入されたままの状態で印象採得を行う。
印象採得が終了したらすみやかに1次圧排糸も撤去する。
左から 歯肉圧排 印象採得 石膏模型 の写真です